2013.6.1(土) - 7.15(月) 『デッサンが語る海老原喜之助の生涯−初渡欧からパリ客死まで

 来年は海老原喜之助の生誕110周年を迎えます。

 この度、児玉美術館では『デッサンが語る海老原喜之助の生涯―初渡欧からパリ客死まで』展を開催し、単色素描25点、彩色素描20点を展示します。

 欧米では以前から、オールドマイスターと言われる巨匠達の素描は高い評価を受けていましたが、戦前の我が国の洋画界では評価が極めて低く、習作、スケッチや下絵程度の認識しかありませんでした。

 海老原は1923年(大正12)に渡欧し、エコール・ド・パリの旗手の一人であった藤田嗣治に師事しました。藤田の描写力に驚嘆した彼は素描のとりこになり、生涯一貫した素描癖はこの時から始まったものです。

 海老原の素描に対する考え方は「素描は絵画の単なる骨組みではなく、素描自体が絵画である」と主張し、単に目に見える物を描写するのではなく、自分の深層心理を独自の造形感覚で表現することでした。

 では今回展示された作品を見てみましょう。展示作品は入口右側の壁面から渡り廊下までの5つの面に大別されます。

 第一の壁面は初渡欧から1934年(昭和9)帰国後の戦前の作品です。(裸婦を描く自画像)は昭和2年作で、現存する最も旧い素描でパリの風を感じさせる爽やかな作品です。(市場)(乞う)は大勢の人物が描かれ、賑わいと祈りを表現しています。

 第二の壁面は素描三昧の日々を送った人吉時代と、堰を切ったように大作の油絵を発表した熊本時代前半の素描を展示しています。

 なお昭和28年の熊本大水害で多くの素描画が失われてしまいました。

 (母子)(歩く)は発想と造形思考の転換が図られ、一本一本の線が力強く生き生きとしています。

 第三の壁面は熊本時代後半から逗子時代の素描です。(モビール)(花)は第二壁面の作品より更に造形思考の転換が深化しています。(雨の日)(アマゾン)は逗子時代の作品ですが、海老原の激しさが薄れ、穏やかさを垣間見ることができます。これは逗子の風土によるものでしょうか。

 第四の壁面は永住を決意して1967年(昭和42)再渡欧した時の作品です。(南の国)は鮮やかな色彩で郷里の南国鹿児島への強い愛着が感じられます。(絶筆シルク)は奔走する2頭の馬上に2つの輪をかざしたサーカスの踊り子が軽快に立っています。死後パリのアトリエのイーゼルに懸かっていた記念すべき作品です。

 第五の壁面は熊本時代の作品で、海老原の典型的な単色素描10点を展示しました。

 海老原の素描から受ける印象はたゆまざる製作意欲、豊かな造形性と鮮やかな色彩で複雑な表現をしていることです。

 66歳の若さで客死した海老原はその生涯に多くの優れた作品を残しました。鹿児島が生んだ日本を代表する洋画家、海老原喜之助の素描に思いを馳せて御覧いただけたら幸甚です。

展示作品  

「人形遣い」「モビール」「南の国」「大道の物売り」他約50点
                         
観覧料 一般500円 高・大学生300円 小・中学生200円
(常設展もご覧いただけます)


     乞う
乞う
歩く
歩く
モビール
モビール
南の国
南の国



展示作品のご紹介  *作品紹介を追加しました。

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