2019.9.4(火) - 10.27(日) 『久保満義 大地の色 生命のかたち展 

陶芸家・久保満義は奇を衒うことなく終始王道を歩いています。

彼は2011年第43回日展において2度目の特選を受賞してから7年の年月を経て、昨年見事に工芸美術・日展会員賞に輝きました。

 当館ではこの快挙を祝って久保満義日展会員賞受賞記念展―大地の色 生命のかたち―を開催し、久保の最初期の作品から今回の受賞作品まで、一堂に展示することにいたしました。

久保は1955年生まれ、南さつま市笠沙の出身。鹿児島大学教育学部美術科で厚東教授に現代陶芸の考え方やその造形に就いて厳しく薫陶を受けました。そして卒業と同時に、類稀な彼の資質はたちまち開花して受賞を重ね、現代陶芸界の注目を浴びるようになりました。

久保の作る口の閉ざされた作品は従来の壺や食器など『使う陶』とは異なり、絵画や彫刻と同じく美を追求する『観る陶』です。人々はこれをオブジェと呼び、親しんでいます。更に彼の目指している新しい陶芸は観る人が、想像する『読む陶』でしょう。

久保の作陶法は言葉から入っているように見えます。抽象的な一つの言葉が脳裏に浮かんだら、そのイメージを作品にします。例えば20代後半の『嶂シリーズ』はエメラルドグリーン、30代の『未踏シリーズ』は乾いた白色の釉薬を使って、壁のように立ちはだかる峰や誰も足を踏み込んだことのない山を、限りなく夢をふくらませて表現しています。

前衛陶芸の第一人者である故鈴木治氏は当美術館をこよなく愛でて、毎年訪れるのが常でした。1990年4月来館された時、久保の白い石膏のような肌を持った『未踏シリーズ』の作品を見て、「これだけの造形ができるのならもう何も言うことは無い。ただ焼物にしかない肌合いを心掛けてほしい」と話された。

そして数年後の1994年に発表された『兆シリーズ』は久保が古書を紐解き、試行錯誤の末にたどり着いた、薩摩の伝統的な鮫肌釉の作品でした。また2001年から始まった『羽化シリーズ』も同じく鮫肌釉の作品で、昆虫の脱皮の様子を豊満な女体に託した彼のイメージが生き生きと感じられ、極めて魅力的です。

以来24年間にわたり大地の色・生命のかたちをテーマとして、独自の鮫肌釉で大地の色を表現し、面の膨らみで生命の躍動を追求し続けています。 

今回の受賞作品・東風2018Ⅲは横長の左右対称的な形がゆったりした大地と生命の温かさを想像させます。焼物らしい肌合いの見事な出来ばえですね。

満義さんおめでとうございます。                                       

       令和元年8月23日  児玉美術館 理事長


展示作品 
「嶂88」「未踏」「羽化」約40点
観覧料 一般500円 高・大学生300円 小・中学生200円
      (常設展も併せてご覧いただけます)

有山長太郎
オープニングの久保満義
白薩摩線刻魚文壺
未踏シリーズ
有山雅夫
嶂シリーズ
羽化シリーズ
羽化シリーズ
受賞作品
日展会員賞 『東風 2018−V』