財団法人 児玉美術館

理事長 児玉 利武

 
 

美術館への招待

  児玉美術館は「樹々と語り、名画と語る緑の中の美術館」をキャッチフレーズに、1985年4月に開館しました。
  約10万平方米の敷地に小川が流れ、杉・桧・竹・梅・楓・椿・栗などの林に包まれた緑豊かな、家族みんなで楽しめる美術館公園です。
  美術館の入口から建物までは、約200米のアプローチがあります。美術館に入ると、道は紅白の梅林に囲まれます。更に小川を渡り、右手に山神様と楓林を見ながら進むと、道は深い竹林の中の一本道となり、竹林の向こうに白亜の美術館が姿を現します。竹林の中のベンチには老夫婦が坐って、静かに言葉を交わしているのを見かけます。
  四季の移り変わりが美しく、縦横に整備された遊歩道を散策し、自然林のベンチに坐って思索すると、心に安らぎを与えてくれます。
  二月の梅に始まり、桜・筍・ツツジ・紫陽花・彼岸花・萩・石蕗・紅葉・と四季折々の楽しみがあります。
  小川にはせせらぎと河鹿の声を聞き、樹々には百千鳥がさえずり、あたかも山がお喋りしているようです。杉や桧林を吹き抜ける風は爽やかで、真夏でも冷房は必要ありません。

 2005年10月創立20周年を記念した新館の増設により、大きく展示空間は拡がりました。270 平方メートルの大展示室の中央には、床から高さ 7 メートルの天井まで、ガラス張りされた光庭と白砂のコーナーが設けられ、室内は太陽の光が満ちています。晴天には青空がのぞき、人工的な照明がなくても作品を見ることができます。 北側に設けられた陶磁器展示室には、鹿児島の古陶磁器と近代陶器が展示されて薩摩陶器の全容が分かるようになっています。また、バリアフリーと自然光を取り入れる点に留意しました。身体の不自由な方は連絡をいただければ、開門して館の入口に車を横付けできます。車椅子やオストメイト(人工肛門・人工膀胱)に対応できるトイレが設置されていますので、安心してご来館いただけます。 

 更に特筆してご紹介したいのは、旧館の小展示室を改装して、禮造のアトリエと名付けたことです。禮造のアトリエは、当美術館の主な収蔵作家であり、美術館の創立に深く携われた、故大嵩禮造画伯の自宅アトリエの一部を移設したものです。愛用のイーゼル・パレット・絵筆・絵の具・蔵書など、あたかも主の帰りを待っているかのようです。中央の古いイーゼルは、海老原喜之助画伯の遺品として贈られたもので、いつも師の視線を感じながら真摯に描いて、多くの名作を生みました。椅子に座って画伯との対話を懐かしむことができます。

 美術館の目指す方向は、美術品の置かれた室内、建物、周囲の環境など、すべてが展示空間との考えから、従来のように室内で美術品を見るだけの美術館から自然散策を楽しみ、美術品と対話のできるワイドな美術館と、だれでも利用し、市民参加のできる開かれた美術館です。
  そして美しい自然の中で歴史を伝える品々と語り、小鳥のさえずりや名画のつぶやきに耳を傾けていただきたいと思います。美術品も建物も鑑賞する人も、すべてを豊かな自然の緑のなかに包み込むことができるなら、この上ない喜びです。

 樹々の緑、小川のせせらぎ、鳥の囀りなどが皆様のご来館をお待ちしております。